安全で楽しい山登りの秘訣

小股でゆっくり、おしゃべりができる程度の速さで歩くのが安全で楽しい山登りとなる秘訣です。

  大股で急いで歩くと、疲れやすく、事故を引き起こしやすいです。

一般的な登山中の注意事項

徒然草(兼好法師による随筆)にある「高名の木登り」にこうあります。『あやまちは、やすき所になりて、必ず仕る事に候』→「あやまちは、簡単な所で必ずやってしまう」

危険な岩場などでは注意しているため事故は少ないですが、次のような時、所では事故が多いいですので気を付けましょう。

・気が抜けてボート歩いている時

・下山途中

・素敵な景色に目を奪われながら歩いている時

・ながら登山(歩きながら着替え・地図読み、スマホ操作等)をしている時

 

やすき所ではありませんが、次の状況でも事故は起こりがちです。

・疲れてきた時

・オーバーペースで歩いている時(他のメンバーに無理についていこうとしている時)

・浮石、木の根っこのある登山道を歩いている時(ぐらぐらする浮石に足を置いてバランスを崩して転ぶことがあります。雨上がりの木の根っこは滑りやすく足をのせると転びやすいです。どちらも避けて歩きましょう。)

・下ばかり見て歩いている時(頭や顔を前方にある木、岩にぶつけることがありますので、頻繁に前方を確認しながら歩きましょう。 そして何よりも前方、周囲の景色、樹々、草花などを楽しみながら登山しましょう。)

・ザックにサイドバッグ・ストック等が付いているのを忘れて狭い岩場を通る時(ザックサイド等が岩にあたり、その衝撃で滑落する危険があります。

・急斜面・岩場を登る時 (3点支持が原則です。4本ある両手・両脚のうち、一つだけを動かし、他の3つは動かさないで登ることを3点支持といます。)

・急斜面等についているロープ・鎖・梯子等を過信して全体重をかけてしまう時(ロープ・鎖がしっかりと固定されていないこともありますので、使う時は事前に力をかけて安全かどうかを確認してから使用します。また、ロープ・鎖を利用する時はバランスをくずしやすいので、落ち着いて利用しましょう。ロープの中には強度の弱い細引き(細いロープ)が張っている場合もあります。この場合は、これで体を支えることは危険です。木の枝、木の根、石などを支えに利用する際にも事前に安全かどうかを確かめてから利用しましょう。)

また、このような急斜面、岩場、ロープ、梯子等の前後も危ない箇所があり、気を抜くと急斜面を滑落することがあります。

上記は、ガイドが登山中の適時に注意等をさせていただきます。

  

危ないな、疲れたな、と思ったら休憩を取りましょう!!

道迷いに注意

個人、または仲間同士で登山中、道迷いが原因で事故が発生するケースがありますので、その際の注意点を記します。ガイド登山ではまず道迷いはありませんが、もしあった場合もこれらの注意点に沿って対応します。

・正しい方向に向かっているか、磁石(コンパス)と地図、またはGPS機能の付いたスマホアプリ(ヤマップ、ジオグラフィカ等)で確認しましょう。また、地図等で場所・方向が確認できる技術を身に着けておきましょう。

・特に歩き始めに注意します。正しい登山道を歩きだしたらほぼ安心してその登山道に沿って歩けば登山を楽しめます。

・ただし、登山者の往来が少ない登山道はルートがはっきりせずに道迷いを起こしがちです。特に、下りの沢沿いの道、広い尾根道は道迷いをしやすい場所となります。更に霧・雨の時は道迷いをしやすくなります。

・枝等に着いたリボン、岩に描かれたマーク、踏み跡を探し正しい登山道を歩きましょう。(ただし、リボン等は林業作業者用で登山者用でない場合がありますので、地図等で逐次現在の位置が登山道かどうかを確認しながら登山をするのが基本です。)

・道迷いをして登山道以外のヤブの中を歩くと肉体的・精神的な疲労を招き、急斜面での転倒・滑落事故を引き起こしやすく事故例が多いいです。登山道でないところを歩くヤブ漕ぎ等はやめましょう。

・道に迷ったと思ったら落ち着いて、登山道まで引き返すのが鉄則です。そして正しい登山道にいることを確認して正しい方向に歩きだしましょう。また、心を落ち着かせて、地図、コンパス、GPS等で現在地、登山道を確認します。焦って、やみくもに進むと岩場、崖にでて滑落する危険があります。深呼吸して、お菓子、お湯などを取って落ち着いてから行動しましょう。沢沿いの道を降りて登山道でないことが気づいた際、登り返して登山道に引き返すのはかなりしんどいですが、この忍耐が安全登山にとってとっても大事です。

 

・地図の縮尺のため、実際にはある尾根や沢が地図上に表れない場合もあることがあることも知っておきましょう。また、地図に反映されていない登山道があることもありますので地形状態を確認しながら登山することが必要です。

登山のための1,2,3

体力

・普段から体力の向上に努めましょう。街中の散歩、階段歩き(できれば1段飛ばし)、スクワットなどなどがお勧めです。通勤で電車等を利用するならば一駅、二駅前で降りて徒歩時間を長くするなどしては如何でしょうか。

バランス感覚

・年を取るとバランス(平衡)感覚が低下します。50歳、60歳になるとバランス感覚は20歳の時に比べて20%程度になっていることを自覚して登山をしましょう。ふらつきそうな場合はいったんしゃがむ、岩場ではしっかりと三点確保でバランスを取る、疲れたなと思ったら、お菓子、水分補給しましょう。

水・食料

・水分補給は熱中症対策に欠かせません。登山中の補給水量は以下の式で求められます。

補給水量=5mL x 体重(kgx 登山時間(時間)

60kgの方が、4時間歩く場合は、1.2リットル(5x60x4=1200mL)を登山前から登山中にかけて飲むようにします。いっぺんに飲むのではなく、少量を頻繁に飲むのが効率的な飲み方です。(勢いよく飲むと、喉越し爽快となりますが、体内に吸収されにくく、尿として排出されやすくなります。)

・食事・お菓子(間食)の補給も必要です。登山前から登山中にかけての補給エネルギーは以下の式で求められます。

消費・補給エネルギー(Kcal)5 x 体重(kgx 登山時間(時間)

 

60kgの方が、4時間歩く場合は、1200Kcal=5x60x4)を取るようにします。朝食に500Kcalをとったとして、700Kcalを登山中に、こまめにお腹がすく前に取るようにしましょう。「シャリばて」と言って、お腹がすくと歩く力も出なくなります。昼食と間食をおにぎりだけとした場合、おにぎり1ケが約200kcalですので4ケ持参し(700kcal4 x 200800)、間食(行動食)として1時間に1ヶづつ、お昼に2ケ程度食べるというのも一例です。もちろんおにぎり以外のお好みのお食事、お菓子等でのエネルギー補給も結構です。

服装・装備等

・靴

通信販売で購入するのではなく、登山用品店で試し履きをして自分の足に合うことを確かめてから購入しましょう。足に合わない靴を履いていると靴擦れをおこして痛くて登山を楽しめません。初めて購入する場合は、捻挫防止に効果的なハイカットの登山靴がお勧めです。また防水性のある靴がおすすめです。雨天時や、濡れたところを歩く際にも安心です。

・服装

下着のシャツは、汗冷えしないような吸湿・速乾の肌シャツを着ましょう。化繊か、毛がおすすめです。木綿のTシャツを着る際は、着替えを持っていく、またはタオルをTシャツと背中等に入れておくのも一法です。木綿のシャツは吸湿性はありますが速乾性がなく、風が吹くと冷たくなり低体温症を引き起こすおそれがあります。よって、木綿のTシャツを着用される際は汗冷え対策用に着替えの持参をおすすめします。また、一般的なジーンズは生地が厚く木綿性で足に負担となり、特に濡れると重くなり歩きにくくなりますのでおすすめしません。

・雨具

(カッパ)を持参しましょう。天気予報に雨の予報がなくても山では雨が降ることがあります。カッパ上下は持参しましょう。低山(1000m程度まで)の場合は防寒着代わりにもなります。

・ザック

日帰り登山なら20リッター(L)程度、泊まり掛けならば40L程度がお勧めです。

・ストック

ストックがあると急な登り坂でも楽に登れるようになります。また下り坂でも楽になります。ただし、ストックに過信しすぎるのも怪我のもととなり良くありません。また、岩場ではストックは邪魔になるのでしまいます。

雪山以外では、ストック先端にキャップを付けましょう。キャップを付けないで使用すると鋭利なストックが土に刺さり土壌流出を促し登山道が崩れてしまうからです。

・ヘッドランプ

日帰り予定の登山でも、下山が遅れて日が暮れて暗い中を歩くこととなることもあります。特に日の短い秋、冬は34PM頃から暗くなります。ヘッドランプがあると暗い中でも登山ができますので安全のために持参しましょう。

 

 

装備について質問がありましたらお尋ねください。多少ならお貸しできるものもあります。

熊対策

「これさえやれば大丈夫」という対策はありません。まずは遭遇しない方法としてよく知られている鈴(すず)、おしゃべり、大声をだすなどは有効と言われています。もし出会ってしまったら、背を向けず落ち着いてゆっくりと後退し、クマ撃退用スプレーを持っている場合は噴射準備をします。東京では熊目撃情報をスマホで得られます。入山前に確認しておきましょう。奥多摩だけでなく、高尾山でも目撃情報があります。

ハチ対策

スズメバチの活動時期は、5月から11月頃で、9月から10月頃が特に攻撃的になります。スズメバチは黒い色に対して攻撃ですので白など明るい色の服装の方がおすすめです。また香水や整髪料に含まれる成分を警報フェロモンと認識し、人を襲うことがあります。野山へ出かける際は香水、整髪料の使用は控えましょう。

低体温症対策

冬の雪山に限らず、夏山でも汗で濡れたシャツが風雨により冷えて低体温症になる恐れがあります。その対策として、吸湿速乾性のシャツを着ること、また濡れたシャツを乾いたウールや化繊等のシャツに着替える、保温性のある防寒着を着る、温かいお湯などを飲む、お菓子等を取る、カイロを当てる、などの措置を取ります。飲み物はカフェインの入ったコーヒー、やアルコールは血管の収縮・拡張を招き不適です。

単独登山

一人での山歩きは気兼ねなく山を楽しめます。一方、単独登山での事故は多発しています。安全な登山のためには単独登山はあまりお勧めできません。グループ等で登山をした場合に事故等にあった場合は仲間が助けてくれるので大きな事故になりにくいためです。

登山保険への加入等

十分に注意していても事故は起こることがあります。事故等が発生した際は、ヘリコプター、救助費用に多額の費用(約50-200万円)が掛かるケースがあります。弊ガイド登山に参加される際には登山保険への加入をお願いしています。ご不明な際は手軽に入れる保険をご紹介いたします。

弊ガイド登山にご参加いただいた場合は、ガイドが参加者全員の登山届を提出しますので参加者個人が登山届を提出する必要はありません。

一方、個人登山をする際には、登山届の提出をお忘れずに! 万が一遭難した際にはこれを基に救助活動が行われます。少なくともお出かけ前にはご家族にどこに行くかお知らせください。

 

また、ココヘリ、という会員制捜索ヘリサービスがあります。個人登山をする方は入会して持参することをお勧めします。なお、ガイドは、ココヘリに入会しています。

万が一遭難してしまった場合

絶対生きて帰るんだ!という思いを持ち続けること。諦めたらおしまい! その対策として登山届、ココヘリ、地図・コンパス、スマホアプリ、非常食等を準備していると安心です。

参考文献

  • 日本山岳ガイド協会テキスト
  • 滑落遭難、羽根田 治